頭痛が痛い

怪文を綴る腐女子

限界女オタクのディズニーひとり旅

2月25日、午前9時。

私は東京ディズニーランドにいた。

「みたい」ではなくマジのテーマパークなので、自分を野原ひろしだと思い込んでいる一般人でなくともテンションが上がるだろう。

 

私は東京ディズニーリゾート(以下TDR)が好きだ。好きな時期はイースター、好きなパレードはハピネスイズヒア、好きなショーはテーブルイズウェイティング。大阪に住んでいる、TDR好きな女である。 

今回、35周年のグランドフィナーレにかっこつけて、はるばる大阪からこの地に降り立った。それも、初めて一人で来た。友達がいないわけではない(少ないけど)。TDRに一人で行くのが、ずっと夢だったのだ。

 

この一人旅のメンバーを紹介しよう。

まずは拙者、名をてふと申す。やたら図太いハートと、めちゃくちゃ長い生命線がチャームポイントだ。

続いて、こちらはステラ・ルー。

f:id:tehu-pipipi:20190227214520j:plain:300

全然画面に収まってない奥のうさぎがステラ・ルーだ。手前のはんぺんみたいなのは、エラーくんというディズニーとは無関係のぬいぐるみである。ちなみにこの写真は前々回シーを訪れた時の写真だ。自分の写真フォルダを漁って、ステラ・ルーの写真を撮っていなさすぎて笑ってしまった。しかし私の大切な相棒である。本当です。シンジテクダサイ。

続いて、こちら。

f:id:tehu-pipipi:20190226234641j:plain

虚空を見つめるつぶらな瞳、手前の春巻きを一瞬で吸い込みそうなパカッと開いた口。通称「虚無」だ。何を隠そう、アイドルマスターSideM天ヶ瀬冬馬くんのぬいぐるみである。ちゃんと公式から出たやつだ。本物の冬馬くんはこんな顔をしていないが、これはこれで不思議な魅力があるので、私は「虚無」と呼んで可愛がっている。ちなみに今回は彼も初めてのディズニーランドということで、デールのポンチョを着ての参戦だ。

そう、これは旅先にアニメのぬいぐるみを連れてくる限界女オタクの旅の記録である。

(正確に言えばアニメのぬいぐるみではない)(そういうところが限界オタク)

 

 

AM9:20

ワールドバザールにある、35周年のモニュメントを見上げる。時々35周年のテーマソングである「Brand New Day」が流れるので、気分が盛り上がる。曲に合わせてギャルが目の前を「ワン!ツー!スリー!」と飛び跳ねながら通り過ぎていったので、最高だなと思った。ここにいる人たちは皆テンションが高い。ギャルも子供もおじさんも、世界のスター、ミッキーマウスには勝てないのだ。チップとデールの見分けもつかなさそうなおじいちゃんが、孫とお揃いの耳をつけたりしている。しばらくここでそんな幸せを満喫していた。


AM9:30

さっそくオタクの楽しみ方をするオタクの鑑。しかし、シンデレラガールズの担当アイドルとシンデレラ城とのツーショットなど、言葉で語るまでもないだろう。もっといろんな写真を撮りたかったが、この日はめっちゃ人が多かったのでやめた。一人でニヤつきながら写真をパシャパシャ撮りまくっていたら、いくら夢の国といえど法に触れかねない。ディズニーランドで万引きをすると退園した瞬間に黒服の男たちに抑えられるなどという都市伝説があるが、それを身をもって実証するハメにはなりたくない。

 

AM10:00

さっそく途方に暮れる。

 普段友人や家族と行くときはアトラクションをメインに回ることが多いので、最短ルートでファストパスを取ってから別アトラクションのスタンバイ列に並び、また別のファストパスを取り、スタンバイに並び……ということを繰り返している。しかし、今日の私はアトラクションに興味はない。途方に暮れてファンタジーランドをトボトボ歩いている途中、私の一番好きなアトラクションであるホーンテッドマンションが15分待ちだったので吸い寄せられかけたが、あの球体のライドに一人でポツンと乗るのを想像したら少し悲しくなったのでやめた。あのベジータやナッパが乗っていた宇宙船みたいなライドは、恋人と乗るにはいいが一人で乗るには向いてなさすぎる。

いや、一人向けのライドなんて無いのか。トゥーンタウンで朝ご飯の春巻きを食べながら、そう悟った。ミッキーの家の前には相変わらずの長蛇の列が伸びていた。

 

AM10:30

ショーの抽選に全て外れた私は、未だに途方に暮れていた。園内をぐるぐる散歩しながら、遭遇したアトモスフィアを鑑賞した。アトモスフィアというのは、パークに時々現れてゲリラ的に行われるパフォーマンスだ。

f:id:tehu-pipipi:20190227002433j:plain

海賊に扮した渋いおじさんたちが、息の合った演奏を披露していた。時折手前の5人で華麗にステップを踏んでいたので、私の脳内には完全に新宝島の映像が浮かんでいた。

www.youtube.com

 海賊のおじさんたちの丁寧丁寧丁寧な演奏を聞き終えた後、トゥモローランドへ向かった。

 

AM11:00

前述の通りショー抽選に外れた私は、ワンマンズドリームを見るために並んでいた。悲しいことに、このショーは今年で終わってしまうのだ。下手したらこれで見納めかもしれない。この旅の目的のひとつでもあった。

 

AM11:30

f:id:tehu-pipipi:20190227003303j:plain

 最高!!!!!!!

オタクなので最高のものを見ると語彙力が全て失われてしまう。写真加工が下手すぎて、ミッキーたちが宇宙からの使者を呼び寄せた写真みたいになってしまったが、何度見ても最高のショーだ。終わってしまうのは寂しいが、「バグズ・ライフ」のシーンで隣の女子高生が「誰?」と戸惑っていたので、リニューアルも仕方ないのかもしれないなと思った。確かに、急に知らん虫が出てきたら困惑するかもしれない。なんせ虫だし。

しかしショーは最高なので、ぜひ終わる前に見てほしい。ミッキーを「世界の恋人」と高らかに歌い上げる様と、それを平然と受け入れるミニーの器のデカさ。見習いたいものである。

 

PM0:30

昼飯の調達のため、トゥーンタウンを訪れた。私がランドで一番好きなエリアである。今はインスタ女の巣窟となってしまったが、細かいところまでジョークで溢れた素敵なエリアだ。ここに住んだら楽しそうだ。

f:id:tehu-pipipi:20190227004314j:plain

と思ったが、こんな気の狂った家に住むのは嫌なので、やっぱ大阪でいいやと思った。ここの住民は家に個性を出しすぎだ。楳図かずおはここに家を建てるべきだったんじゃないだろうか。

 

PM13:00

限界女オタクあるある、「飯とぬいぐるみの写真を撮る」だ。先ほどのトゥーンタウンにある、ドナルドの甥っ子たちが経営しているというレストラン(ヒューイ・デューイ・ルーイのグッドタイム・カフェ)の人気メニュー、ミッキーの手である。

f:id:tehu-pipipi:20190227004901j:plain

叔父の友人の手をバーガーにするなど、善良な市民ではまず思いつかない。あの3人組、なかなか狂っている。そういえば注文するときに見たカウンターの奥も、ケチャップが飛び散っていたりトマトが壁にぶつけられていたりと、衛生的にもかなり問題がありそうだった。やはりあの町に住むにはそれなりの覚悟がいりそうだ。ミッキーの家の前なんて毎日人が押しかけてるし。

それはさておき、私はこの昼飯をトゥーンタウンからアドベンチャーランドまでエッホエッホと運んだ。目的はそう、

35周年パレード、ドリーミングアップを鑑賞するための場所取りだ。パレード開始は15時。つまり、今から2時間、私は地べたに座って待ち続けるのだ。あまりディズニーに興味のない人からしたら、先ほどの甥っ子3人組よりよほど気が狂っていると思われるかもしれない。しかし、ガチのファンは開演直後から夜のショーを待ち続けていたりするので、この程度はまだまだ序の口なのだ。それに、2時間程度の待ち時間など、たいしたことではない。なぜならそう!

 

f:id:tehu-pipipi:20190227005722p:plain

なぜなら私はオタクだから!

 

f:id:tehu-pipipi:20190227005850p:plain

オタクだから!!!!!

 

f:id:tehu-pipipi:20190227005928p:plain

オタクだから~~~!!!!!

 

f:id:tehu-pipipi:20190227010034p:plain

オタク最高!!!!!!!!!!

 

2時間程度、普段休日の朝に起きた後スマホを見ながら布団でゴロゴロしているうちに気づいたら過ぎている時間と変わらない。最悪スマホがなくても、腐女子なので推しCPのディズニーランドでの過ごし方を考えるだけで5億年は経ってしまう。これだからオタクはやめられない。

推しにどこのキャストさんのコスチュームを着せるかを考えている途中、パレードで踊るダンスの練習をさせられた。やたらに工程が多く、とても覚えきれなかった。動きの伝え方も「カッコよくキメて!」みたいなフワッフワした指示だったので、仕方なくステラ・ルーにモンキーダンスをさせてその場をしのいだ。

 

PM15:00

f:id:tehu-pipipi:20190227220102j:plain

あっ……!

 

f:id:tehu-pipipi:20190227220144j:plain

ミッキーだ!!!!!!!

パレードが始まり、ミッキーが見えた瞬間ワァと湧き上がる観客たち。もちろん私もニッコニコだ。「なんて素敵な夢なんだ〜!」と感動しながら観客たちに手を振るミッキーに、「ワオンワオ〜ン」と同調するプルート。ネズミが世界のスターとして君臨するこの世界で、あくまでペットの犬としての役割を全うするプルートが私は好きだ。彼はグーフィーを見て何を思うのだろうか。それはプルートのみぞ知る。

それ以降も様々なフロートが目の前を通り過ぎていく。プリンセスが集合しているフロートは、あまりの神々しさについ拝んでしまった。

グランドフィナーレのドリーミングアップは、「停止バージョン」である。ある程度まで進んだ後、全てのフロートが一旦その場に留まり、キャラクターやキャスト、ゲストが一緒になって踊ったりして盛り上がるのだ。フロートが停止するのは走行ルート中の真ん中あたりだけなので、うっかり位置取りを間違えると、自分の前は普通に通り過ぎて向こうの方で盛り上がってる……みたいな悲しいことになりかねないので、今後場所取りの予定がある方は注意されたし。
私はクラリスという女のリスの前を狙ったのだが、ちょっとズレてアラジンとジャスミンの前になってしまった。まあこれはこれで目の保養だ。二人の顔の「圧」が凄すぎて、間近に来られた時は慄いてしまった。ポケモンで「いかく」をくらったらこんな感じなのだろうか。確かにこれは攻撃する気も失せる。男も女も、顔のいい人間は少し離れてみるくらいがちょうどいい。

 

PM16:00

パレードを終えて、本当に目的を失ってしまった。

お土産でも買うか……とまたワールドバザールへと向かう。午前中は新商品の発売日だったのか入場制限がかかるほど混雑していたが、この時間にはさすがに緩和されていた(あとで調べたら、どうやら35周年のフラッグの再販らしかった)。

レジでお会計を済ませていると、外から突然パァンと発砲音のようなものが聞こえた。この音、聞き覚えがある。ライブでテンションが最高潮に達した時によく聞く、あの発射音だ。慌てて外へ出ると、人々がワアワアと何かに群がっている。宙を舞う金銀青のホロシート。そう、銀テープだ。

ワールドバザール内のモニュメントからたまに銀テープが発射されるのは聞いたことがあったが、具体的にどのタイミングなのかは全く知らなかった。最後に発射された銀テープを、空中で掴む。そういえば、この手で銀テを掴んだのはこれまでの人生で初めてかもしれない。わくわくしながらテープを見たが、何も書いていなかった。無地かい!

しかし周りの人々はその無地のテープを我先にと拾い集めていた。そんなに何十本も拾ってどうするのだろうか?ちゃっかり各色一本ずつ手に入れた私が言うことでもないのだろうが。

 

PM16:20

見た目は完全にアイスなのに、中身が牛カルビ丼という脳を惑わせるものを食べるなどした。実は前回来た時も食べたのだが、存在があまりに面白すぎたのでまた食べてしまった。

今気づいたが、前回よりトッピングが進化している。図らずも、私がいつも何も考えずバクバク食べていることが発覚してしまった。

 

PM16:30

ボケ~ッとシンデレラ城あたりを徘徊する。イッツアスモールワールドの仕掛け時計を見たり、キャッスルカルーセルでジャージ姿で白馬に乗ってキャッキャしている男子高校生を眺めるなどした。目的を失い、いよいよ不審者に近づいてきた。

TDRで暇を持て余すなど、究極の贅沢だろう。家で一人で酒を飲むときに、スーパーで一番高い生ハムを買っちゃうくらい贅沢だ。昔、家族でTDRに来た際も目当てのアトラクションは全て制覇して暇になったことがあったが、その時はディズニーランドホテルに宿泊していたため、部屋に帰ってテレビでメジャーを見た。あのホテルでメジャーを見た人間など、私くらいではないだろうか。 

 

PM17:00

ミッキーのフィルハーマジックに入る。本日初めてのアトラクションだ。といってもシアター型なので、どちらかといえばショーなのだが。

カップルや家族連れに囲まれながら、一人で入る。人数をカウントするキャストさんに、声をかけられた。

キャストさん「こんにちは!何名様ですか?」

ワイ「一人です……」

キャストさん「一名様ですね!あっ(装備していたステラ・ルーを見て)

       二名様かな?(^^

出た出た出ました!よっディズニーランド! 

心の中の私は手を叩いて喜んだが、陰キャのオタクなので気の利いたことは何も言えず、「ァッス……」としか言えなかった。「虚無もいるので3人ですよ」などと口走らなくてよかった。

f:id:tehu-pipipi:20190227224626j:plain

 (これは鳥貴族のラムネサワーと虚無)

 

PM18:00

今日の夜の飛行機で帰るという弾丸ツアーにしてしまったせいで、そろそろ出なければならない。暗くなってきたパークを、あてもなくうろつく。通り過ぎるウエスタンリバー鉄道に手を振ると、みんなが降り返してくれた。顔もよく見えなかったが、あの人たちは一人でポツンと立って手を振る奇妙な格好の女のことをどう思っただろう。これが普通の電車なら心霊現象だが、ディズニーランドなら許される。ちなみに奇妙な格好とは、全身リズリサという限界女オタクの見本のような服だ。これがUSJならどこのクルーにも服のことをツッコまれるのだが、TDRでは誰にも言及されない。何かそういう方針の教育でもしているのだろうか?グリーティングでは一度だけミニーに「アンタその服いいわね」みたいなことを言われたことがあったが(ミニーはそんなこと言わない)、どう見ても彼女の方が総合的に可愛いので、セレブの女の余裕みたいなものを感じた。

 

 

 

そして18時過ぎ、私はパークを出た。

上の方でも書いたが、一人でTDRに行くのは私の夢だった。たいした夢ではないと自分でも思う。それを当たり前にしている人はたくさんいるし、何も困難なことではない。

それでも、あの日は私がひとつの夢を叶えた日であった。

私はTDRが好きだ。キャラクターが好きだし、ショーやパレードは感動するし、アトラクションはどれも面白い。何度行っても飽きることはなく、いつ行っても新鮮な空気を感じられる。

そして何より、あそこにいる人たちはみんな幸せそうなのだ。

みんな笑顔で歩いている。知らない人同士で手を振り合って、笑っている。高校生の女の子たちがお揃いの耳をつけて、飛び跳ねて喜んでいる。普段ディズニーなんて興味の無さそうなお父さんも、ミッキーを前にすると恥ずかしそうに笑って写真を撮っている。

あの世界は、そういう場所だ。

いつだったか、新喜劇ですち子が「ピザ食べてる人で不幸な人いませんよ!」と言っていたのを見て感心したことがあるのだが、それと同じことが言える。

ハピネスイズヒアでミッキーが言っていた通りだ。

大人も子供も、男も女も、日本人も外国人も関係なく、みんなの幸せがここにはある。

それらの幸せが、小さな、小さな夢を叶えた私を祝福してくれている気がした。

 

 

22時過ぎ、空港のホテルに着いて、ストロングゼロを飲んで、寝た。