頭痛が痛い

怪文を綴る腐女子

君はプロメアの魂を見たか

私は基本的に映画というものが苦手だ。よっぽど「見るか!」という強靭な意思がないと、映画館まで赴かない。映画館どころかテレビでもあまり見ない。年を重ねるにつれ、「新しいものに触れる」のが億劫になってきた。最近は30分アニメすらろくに見ていない。いつも暇なときにプライムビデオでなんか見ようかなと探してみるのだが、結局「豆助っていいな。」ばかり見てしまう(豆助はかわいいので)。

10日前、友人に「プロメア」という作品を進められた。私はキルラキルのファンであるため、そのキルラキルを制作したトリガーの最新作である「プロメア」の存在も知っていた。トリガーのアニメーションが好きだったため、一応気にはなっていた。が、プライムビデオですら豆助に流される私である。自分からよし映画館に行こうと腰を上げるまでには至らなかった。ここは単に私の怠慢である。

翌日、そのプロメアを進められたときに同席していた他の友人が、夜にプロメアを見に行こうかと悩んでいた。私も暇であったため、声をかけた。一人で出かけるのは面倒だが、友人と約束してしまえば出かけざるを得ない。こうして私は、ようやくその重い腰をドッコラセと上げたのである。

トリガーが作ったアニメだということ以外、何も知らずに来た。何も知らないので入場時に貰った黄色いカードを不思議な顔で受け取り、席に着いてから開けてみた。緑の髪の美少年が出た。隣に座る友人の好みの顔の男だったので、友人のと交換した。ちなみに初見ではあったが、この緑髪が男なのは知っていた。腐女子のTLに流れてくる顔の良い人間のイラストは95割男である。ついでに腐女子の旬BLネットワークにより、カミナみたいな男と番であることも知っていた。見た感じ、あまり私の好みのCPではなさそうだが、まあキャラクターはどうでもいい。私はトリガーのアニメを見に来たのだから。

 

そして、私は大スクリーンで「プロメア」を浴びた。

 

すごかった。「やってくれたなトリガー」という思いでいっぱいだった。キルラキルをリアルタイムで追いながら駆け抜けた半年が、2時間弱の映像に詰まっていた。目まぐるしく展開する画面に鳥肌の立つような音楽、コミカルながらも沸き立つ演出、世界観を彩る魅力的なキャラクター。そして何より、110分をずっと全力疾走し続ける怒涛の展開。あっと驚くようなどんでん返しは何もない。期待通りの展開が、期待以上のスピードで襲ってくる。王道のストーリーにわかりやすい敵役を置いてはいるが、勧善懲悪ものではない絶妙な複雑さが憎い。それでいて、悪の帝王を殴り倒したときと同じ、いやそれ以上のスケールの爽快感で終わるのだ。カートゥーンのようなポップな色使いとは裏腹に、ただひたすらに、最初から最後までずっと熱い。開始10分から最高にカッコいいシーンに打ちのめされ、そこから「熱さ」が上乗せされていく手腕はお見事としか言いようがない。

初見はついていくので精一杯だった。ストーリーなんて全然頭に入ってこないし、本当にBLどころではない。

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初見の私

だが、それでいいと私は思っている。むしろ、それが初見の正解だ。

最初はただ、メカ!メカ!ロボ!変形!バイク!炎!氷!メカ!炎!炎!炎!ドラゴン!炎!ドラゴン!炎!ロボ!ロボ!ロボ!ロボ!変形!ロボ!ロボ!ビーム!ドリル!ロボ!巨大ロボ!宇宙!ガイナ立ち!ガイナ立ち!燃えてきた!うお~~~~!!!!!くらいの感想でいい。完全燃焼して家に帰って、燃え尽きたまま映画のことを思い出す。それでいい。ただ、「熱かったな」という感想だけで終わってもいいのがこの映画の魅力だ。

私も初見の感想はこんなもんだ。「リヨ」ではなく「リオ」である。誤字るくらいには身体が落ち着けていなかった。ぶっちゃけBLなんて全く感じなかった。腐女子がBLだと騒ぐせいで男性の足が遠のいていないか心配である。BLなんて全然気にならない熱さなので、安心してほしい。男が一人でもいればすぐCPにするこの私が言うのだから間違いない。

 

それはともかく、もしまだ映画館でプロメアを見ていないという人がいたら、今すぐチケットを取って見に行け。プロメアは映画館で見るための作品だ。後悔する前に行ってくれ。あの画面を、スケールを、音楽を、爽快感を、映画館で感じてほしい。テレビで見るプロメアの面白さが100%なら、映画館で見る面白さは500%だ。ロボやドラゴンがビル街をドッタンバッタン暴れまわって最終的に宇宙に飛び出す作品が、映画館の大スクリーンで面白くないわけがない。プロメアはジェットコースターみたいなものだ。映画館で体験することに大きな意義がある。

画と音楽が「アニメーション」という拳になって襲い掛かってくる瞬間がたまらない。これを浴びるために私は足しげく映画館に通っているのだ。プロメアが「目から吸うシャブ」と呼ばれる所以である。

プロメアの爽快さは、画と音楽の力強さもそうだが、その王道ストーリーにもある。要は「最初は立場上敵対していた二人がより驚異的な敵を倒すために共闘する」というお約束展開だが、上でも述べたようにそのベタベタお約束展開をベタベタに熱くスピーディに描いているのだ。「王道」には「王道」たる理由がある。「王」の字は飾りではない。作り方さえ間違えなければ、「王道」を超えるものはないのだ。

さらに、その王道ストーリーを支えるのが、登場する多彩なキャラクターだ。彼らのすごいところは、誰一人として物語の邪魔をしないところにある。ベタベタの王道ストーリーを展開するため、誰も足を引っ張らないし誰も無駄なことを言わない。いわゆる「ベンチでの解説セリフ」みたいなものも全然ない。皆がそれぞれの立場で自分のすべきことをしっかりと遂行している。「ここで彼らがこう動いてくれたらスムーズに進むのになあ」と客が思う動きを、各々が確実に実行してくれる安心感がある。誰も話の腰を折らないからこそ、最初から最後までノンストップで進む爽快感が生まれるのだ。

 

前述したとおり、私はプロメアの爽快感を浴びるために映画館に何度も足を運んでいる。そうやって何度も見ていると、作品の熱さや爽快感に隠された様々なことに気づき始める。

画面中に散りばめられた記号の意味やキャラクターの行動・セリフが見えてくると、画面もまた違って見える。決して熱さだけで誤魔化している作品ではなく、細かいところまで作り込まれているのがわかる。キャラクター一人ひとりにもいろんな設定があるだろうということは伺えるが、作中では必要最低限しか触れられない。だからこそ画面の隅々まで見たくなるし、誰かが「このシーンでこのキャラがこんなことしてたね」と言っていたら確認しに行きたくなる。リオの爪が欠けていたり、アイナがガロよりも早くペロリとピザをたいらげて二枚目を食べ始めていたり、妙にコミカルな犬がいたり……。何度見ても新しいものに気づける楽しさもあり、飽きることが無い。

ついでにこれは腐女子の戯言だが、こういうアニメでキャラ萌えしてしまったときの焦燥感といったらない。キルラキルでもそうだったのでよ~くわかるのだが、制作陣は「このキャラはこういう設定」というものを共有していても作中では我々には見せてくれず、ある時突然、雑誌のインタビューとかトークショーとかでポロッと零される。そしてキャラ萌えオタクは、泣きながらそれらを必死にかき集めるだけの豚と化すのだ。二次創作する我々の身にもなってほしい。しかしそうやってかき集めた情報でキャラクターに肉付けしていくのは楽しいし、新たな設定が明かされたときの腐女子のお祭り騒ぎほど楽しいものはない。我々オタクは制作陣に振り回される豚だ。これからもついて参りますので、どうかマドバ幹部二人の情報を……!あの二人の設定をください……!後生ですから……!何卒、何卒……!

 

話は随分逸れてしまったが、「映画館で」プロメアを見てほしいという話である。10日間で5回見た私が言うのだから間違いない。今10日前に遡れるなら、「金ローで放送したら見るわガハハ」とかほざいていた自分をブン殴って映画館にブチ込みたい。ついでに言うなら、あと10日ほど遡ってプロメアのプの字も頭になかった頃の私を人間大砲で映画館に打ち込みたい(お前たち~~~~~!!!!!)。

しかし悲しいことに、そろそろ上映終了する映画館が増えるだろう。近場の映画館も20日つまり今日で終了するところが多く、悲しみに暮れている。だがまだまだ続けてくれているところはある。後悔する前に見に行ってほしい。もう見たという人も何度でも行ってほしい。一番近所の映画館も数日前までは20日終了予定とあったが、今日見たらその文字が消えていたので、あまりの嬉しさにこんな長文を書いてしまった。その調子でどんどんロングラン上映して、一人でも多くの人に見てほしいと思う。大人も子供も男も女も、みんな等しく燃え尽きられる作品だ。あと30年くらいロングラン上映していてほしい。

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上映が終わった後、テレビの画面で見て後悔しないでほしいのだ。ハム太郎との約束なのだ。絶対に映画館でキョロリンしてあちゅちゅを体感してほしいのだ。げんまるなのだ。

 

プロメアの気持ちよさを吸うのに2000円でお釣りがくるのは、どう考えてもコスパが良すぎる。本物のシャブは数gウン万円だが、プロメアは110分2000円弱だ。日によってはもっと安い。しかも何より合法である。警察官に「プロメアを吸いました」と自首しても捕まらない(新種のヤクと思われて拘束される可能性はある)(新種のヤクなのはあながち間違いではない)。

とにかく、今すぐ近くの映画館を調べて行ける時に行ってくれ。そして君もプロメテックエンジンになろう!

ついでに、プロメアを見た後でも見る前でもいいので、キルラキルも見てほしいなあと思うオタクであった。