頭痛が痛い

怪文を綴る腐女子

夢女子VS腐女子、仁義なき戦い2019

 

 

 

グラブルを再開してから、そろそろ一年になる。ランクは120を超えたところだが、正直まだまだ弱い。ハイレベルのマルチバトルは一人では到底クリア出来ないし、古戦場でもエクストリームが精一杯だ。ルフィではないが、私は人に助けてもらわねぇと生きていけねぇ自信がある!!!(ドン!!!)じゃあお前に何が出来るのかと聞かれれば、ワンピースで例えるならアラバスタ編のルフィくらいには強くなったかなあという気はする。ハイレベルでないメデューサやナタクならなんとかソロで倒せるレベルだ。これがアテナ等の苦手な属性になると全然ダメなので、おそらくここがギリギリのラインである。それでも、グラブルってアゲハ蝶に似てるなとか言っていた頃に比べればかなり強くなった。ちなみにあの頃の因縁のベリアル武器は、デオキシスみたいな変な素材が全然集まらないので積んでいる。

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マジでなんなんだ?これ


私がここまで頑張れているのは、言うまでもなく推しの存在が強い。愛の力は無限大だ。しかもグラブルをやればやるほど推しが増えていくので、愛の力は日に日に増し、最早悟空のようなインフレ状態と化している。しかし悲しいかな、推しへの愛の力はグラブルでの強さとは比例してくれない。難儀なものである。

ところでご存知の通り、私が当初グラブルで唯一気になっていたキャラクターはパーシヴァルであった。もちろん今も変わらず推しの一人である。始めた頃は腐女子らしくケツを追っていたのだが、パーシヴァルと共に苦難を乗り越えるにつれ、腐女子らしからぬ感情が顔を出し始めた。

パーシヴァルに女として認知されたい。

これは腐女子とはある種対極の存在である、夢女子の思考に他ならない。

ちなみに私は腐女子といえど夢女子の経験がないわけではなく、というより現在進行形で心に決めた人がいる。いわゆる「ガチ恋」であり、彼以外の殿方と恋に落ちるなんて言語道断、切腹覚悟お命頂戴。本来ならパーシヴァルへのこの気持ちは、決して許されない感情なのである。しかし私はパーシヴァルに認知されたいとはいえ、別に相思相愛になりたいわけではない。例えるならそう、パーシヴァルはフェードラッヘ高校の生徒会長である。そして私はパーシヴァルより一つ学年が下で、生徒会では書記を務めている。よりよい学園を作るのだと生徒会長選挙で演説したパーシヴァル先輩の言葉に感銘を受け、私も学園のために日々精進している。まだまだ未熟ではあるが、パーシヴァル先輩はそれなりに私のことも信頼してくれているはずだ。先輩の身近な人たちが横一列に崖から落ちそうになっていたら、四番目くらいには助けてくれる気がする(アグロヴァル&ラモラック→ランスロット→ヴェイン→私の順。ジークフリートさんは気づいたら自力で助かっていた)。時々パーシヴァル先輩と二人で一緒に下校したりもするし、暗くなった日は遠回りして家まで送ってくれる。「こっちの方面に用があるのでな」とパーシヴァル先輩は言うのだが、私はそれが嘘であることを知っている。パーシヴァル先輩は優しいのだ。そんなパーシヴァル先輩を私は尊敬しているし、パーシヴァル先輩と一緒にいる時は、ランスロット先輩やヴェインくんとは少し違う特別な感情が湧く。これってもしかして、恋……!?

 

 

私はパーシヴァルと、そういう関係でありたい。決して彼の恋人になりたいわけではないのだ。だからこれは浮気ではない。そう自分を納得させて、私は密かにパーシヴァルへの秘密の感情を温めていた。これは他の推しに対する感情とは明らかに違う、言い訳できないほどに夢女子そのものであった。

今見ると、他の推しへの感情は腐女子というより夢モブおじさんな気もしてきた。

 


そんな腐女子と夢女子のハイブリッドとして毎日過ごしていたのだが、ある日、グラブルフェス2019のチケットの一般販売が行われるとの情報を得た。このグラブルフェス2019(以下グラフェス)にて、VR四騎士なるアトラクションがあるということは事前に知っていた。私がもう少しパーシヴァルに対して積極的な夢女子であれば間違いなく先行抽選に応募していただろうが、まだ「これが恋なの……?」の段階なのでスルーしていたのだ。しかし「一般販売」との文字を見た瞬間、これまで数々のチケット(ほぼSideM)一般戦争に負け続けた身として、本能で腕まくりをしてしまった。ヨッシャ!一発かましたろやないかい!

普通に取れてしまった。こうして、私の初めてのグラフェス参戦が決まったのである。

 

 

それから私の夢女子を磨く日々が始まった。いつもより高い化粧水を開けて、顔面のコンディションを整える。パーシヴァルに会うための服を吟味し、爪も塗った。

パーシヴァルに相応しい女というよりは、単純に戦闘力を高めるのが目的である。自分の「カワイイ」を極めたい。そして極めた「カワイイ」私をパーシヴァルに見てもらいたい。

 

ガッツリ「夢女子」を作り込んだ私は、当日エンヤコラと幕張メッセへと向かったのであった。

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正直VR以外特にすることもないだろうなと思っていたのだが、肝心のVRの時間帯が遅かったこともあって、中では結構楽しむことが出来た。

 他にもフォロワーさんとお会いして、一緒にアトラクションで体力の限界を感じたりもした。なぜソシャゲのイベントでこんなに運動させられるのだ。もしかして、運営はグラブルの主な年齢層を知らないのだろうか?妖怪ウォッチのイベントじゃないんだぞ。

あと、わたあめも食べた。この日は朝から水とMDMAラムネしか 口にしていなかったので、このわたあめ含めお腹の中にはカワイイものしか入っていない。

そして外も内もカワイイを極め、私はパーシヴァルに会いに行ったのであった。

 

 

受付の時点で死ぬほど緊張していた。部屋の前で待たされている間、信仰する神もいないのに手を合わせて何かを拝む。手も足も震え、必死に深呼吸して気持ちを落ち着かせる。これが「恋」なのかもしれない。そう思った瞬間、扉が開いた。

可愛らしいメイドさんが出迎えてくれ、椅子に座らされたあと丁寧にVRゴーグルやヘッドフォンを装着してくれた。外の喧騒が消え、小鳥のさえずりが聞こえ始めた。ここはもうフェードラッヘ城である。メイドさんが退室する音が聞こえた。すぐに外からパーシヴァルの声が聞こえる。ああ、私は今からパーシヴァルに会えるのだ。そして、ゆっくりと扉が開かれる――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやそんな感想になることある???

 

私はあの時、確実に夢女子としてあの椅子に座ったはずだ。そうだ、パーシヴァルが部屋に入ってきた瞬間、あまりの「圧」に私は椅子ごとひっくり返りそうになったのだ。そして机の向こうにパーシヴァルが座って、彼が少し身を乗り出してきただけで私はヒェンと鳴いて仰け反った。憧れのパーシヴァル先輩が目の前にいる。自分で勝手に作った設定と混同するほど緊張して、彼の顔もまともに見られなかった。何か話しかけてくれているが、全然頭に入ってこない。せ、せめてそのお顔だけでもちゃんと見よう……。私は震えながらパーシヴァルと目を合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

睫毛なっっっっが………。

 

 

その瞬間、夢女子の私は完全敗北した。リングで拳を掲げていたのは、紛れもなく腐女子の私であった。

先ほどまで仰け反っていたのはなんだったのか、もうこちらから身を乗り出してパーシヴァルのご尊顔をジロジロ眺める。めっちゃ睫毛長い……鼻がすっと通っている……スジの通った蕗……。彼は完全に母親似だ。そういえば、新規イラストが出れば出るほど母親に似てきていたな。こんなに美人で強くて偉そうでぶっきらぼうだけど実は優しい奴の尻が強いはずがない。美人で強くて偉そうでぶっきらぼうだけど実は優しい奴の尻は即堕ち二コマのためにあるのだ。

よく考えなくてもグラブルを始める前からパーシヴァルのことは「尻が弱い人」と認識していたので、元々夢女子に勝ち目はなかったのかもしれない。

完全に腐女子にフォルムチェンジした私は、退席しようと立ち上がったパーシヴァルの尻を一目見ようと、躍起になって屈んだり首を捻ったりしていた。全然見えんな……いっそのこと地べたに這いつくばってやろうかと思ったその時。

 

パーシヴァル「この部屋は少し冷えるな……」

 

ん???と首を捻ったのもつかの間、次の瞬間にはパーシヴァルはなんと剣を抜いていた。

いつものアナルパールなが~いギンビスのアスパラガスみたいな剣が、私の目の前にあった。

 

 

 

あ、これ殺される。

 

 

 

私はそう悟った。

パーシヴァルへの不敬罪として、私は今この場で斬首されるのだ。パーシヴァルの立つ位置からでも、その剣は私の首を跳ねるには十分な長さだ。私は生まれて初めて「死」を感じた。パーシヴァルの剣が彼の魔法で燃えさかる。焼かれるのが先か、首を切られるのが先か。いやしかし、彼に会えた今の私に後悔はない。強いて言うならカインとシスの上限解放がまだなことと、リミテッドラインハルザが来ていないことと、ミュオンに久遠の指輪を渡していないことと、SideM5thライブをまだ見ていないことと、ライブで冬馬くんのソロを見ていないことと、グラブルでSideMコラボ第二弾が来て冬馬くんが実装されていないことと、あとゾンビランドサガコラボが来ていないことと、推しカプのオンリーが決まっているのにそれに参加できないことくらいか。結構あるな。やはりまだ死ぬには早いかもしれない。うわ~ん、尻を見ようとしたのは謝るから許して~。私が土下座しようとしたその瞬間、パーシヴァルは剣をスッと構えた。もうだめだ~と私が辞世の句を詠んでいると、パーシヴァルの剣から炎が飛び、その炎は部屋にあった暖炉に火をつけた。

えっ何?「次はお前がこうなる番だ」ってこと?

困惑する私を置いて、パーシヴァルは部屋を出てしまった。

ポカーンと呆けていると、メイドさんが現れてゴーグルやヘッドフォンを外してくれた。隣の暖炉を見ると、火がついていた。部屋に入ったときには何も燃えていなかったことは覚えている。私が放心状態で荷物を整えていると、メイドさんがその暖炉に気づいて、「あ!暖炉がついてますね!パーシヴァル様がつけてくださったんですね?」とにこやかに話しかけてくれた。魂の抜けた私がバカ正直に「斬られるかと思いました」と報告すると、「パーシヴァル様はそんなことはしません!」と怒られてしまった。か、かわいい~。この可愛らしいメイドさんの方が、私よりよほどパーシヴァルのことを理解している。いやしかし、どう考えてもこんな狭い部屋で剣を抜くパーシヴァルが悪い。尻は弱いくせに……。抜け出た魂が身体に戻らぬまま、私は部屋を出た。人生で初めて死の淵を見たせいで、足元がおぼつかない。フラフラと千鳥足のまま、私は会場を後にした。

 

 

かくして、夢女子の私は腐女子の私に負けた。

気持ちも見た目も体内も設定も全て夢女子として作り込んできたのに、あっさり敗北してしまった。VR前にステージで見たオフィシャルキャストのショーで、パーシヴァルとランスロットが拳を合わせているのを目撃したのがよくなかったのかもしれない。いつかリベンジできる日は来るのだろうか。その時は今よりもっと完璧な夢女子を作って臨みたいと思う。待っていてください、パーシヴァル先輩……!

 

 

 

 

 

 

 

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先は長そうである。