頭痛が痛い

怪文を綴る腐女子

カレーパンの中には「光」が詰まっている

 

 

 

冬馬くんのカレーパン出張販売のチケットを買い逃した。

SideMを知らない人からすればなんのこっちゃと思われるだろうが、とにかく「私が大好きな天ヶ瀬冬馬くんというアイドルがいて」「『冬馬の理由(ワケ)あって、バターチキンカレーパン!』(通称『冬馬のカレーパン』)という商品があって」「そのカレーパンが大阪で出張販売することになって」「それを買うためにはチケットが必要なのだが、数量限定先着順の販売で」「私はそれを買えなかった」ということである。

ひとえに私の怠慢以外の何物でもない。しかし、逆に言えばそれほど冬馬くんのカレーパンが人気ということでもあり、それは素直に喜ばしいことである。冬馬くんのカレーパンは過去にもSideMのイベント会場で販売されており、そのあまりの美味しさに人々は始発で列を作り、昼には完売という大盛況だった。それほど冬馬くんのカレーパンは美味しいのである。

 

 

そう、何を隠そう、私は過去に冬馬くんのカレーパンを食べたことがある。

せっかくなので、あの美味しかったカレーパンのことを思い出したい。

 

 

 

それは忘れもしない、2019年3月16日。「THE IDOLM@STER SideM PRODUCER MEETING 315 SP@RKLING TIME WITH ALL!!!」通称プロミ2日目のことだった。

このプロミでSideMでは初のキッチンカーの出店があり、クレープ2種とカレーパンが販売されていた。1日目の時点でカレーパンが美味いとツイッターではほのかに噂されていたのだが、私はさほど期待していなかった。元々カレーパンどころかカレー自体そこまで好きでもないので、どちらかといえばクレープの方が食べたかった。しかしオタク相手の商売とは無慈悲なもので、カレーパンを買わないと冬馬くんの缶バッジはもらえなかったのである。私は完全に缶バッジ目当てでキッチンカーに並んでいた。

そして缶バッジのために2時間並び、私はようやくカレーパンにありつけた。

まだ肌寒い時期であったため、カレーパンのあたたかさが身に染みる。そろそろ友人との合流時間になるし、さっさと食べてしまおう。私は手にしたカレーパンをひとくちかじった。その瞬間。

 

 

 

 

 

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カレーパンの旨味と、あまりにもバカすぎるワードが私の脳天を直撃した。シラフであれば、こんな地球全土で100億人が思いつきそうなしょうもないダジャレなど、わざわざ創英角ポップ体で思いつきもしない。しかし、冬馬くんのカレーパンはそんな「理性」をも取っ払うほどの美味さだったのである。そうか、これがかの有名な武将、美味すぎ謙信であったか……!

ひとくち食べてみてまず驚くのは、中に詰まったカレーの量である。カレーパンといえばだいたいペチャンコにひしゃげているイメージを持っていた私にとって、これは衝撃的であった。ひとくちかじっただけで、予想していた五倍の体積のカレーが口の中に飛び込んでくる。さながらカレーの海に突き落とされたようなものである。そしてアップアップしているうちに、カレーの旨味が口の中に広がっていく。辛くはないが、だからといってパンチが弱いわけではない。チキンの旨味が溶けだしたルゥにバターのコクが混じり、ほのかな酸味が効いている。これはあれだ、無印のバターチキンカレーだ。あれとおんなじ味がする。そう思ってから、自身の味の引き出しの少なさが情けなくなった。舌が馬鹿すぎる。とはいえ、カレーパンも無印のカレーも、美味いものは美味い。

そしてそのまま食べ進めていくと、今度はチキンの大きさに驚く。カレーパンの具とは思えないほどのそのサイズ。カレーパンを女体とするならば、Hカップ相当の存在感である。しかもオッパイならひとつの身体に最大2つしかないが、チキンはカレーパンの中に2つと言わず3つ4つゴロゴロ入っているのだから、チキンがオッパイよりお得であることは自明の理であろう。

そしてこのカレーとチキンが、サクサクの衣とまた合うのだ。私は今までカレーパンを甘く見ていたと認めざるを得ない。私の中の「カレーパン」を覆したのは、他の誰でもない、冬馬くんのカレーパンだったのである。

 

はっきり言って、コラボカフェ等のオタクを相手にした飲食系の商売は、オタクをナメていると思う。値段が高くて美味くも不味くもないのはまぁいいとしても、肝心の盛り付けすらショボすぎてたまにツイッターでバズっている。中にはポケモンカフェやカービィカフェのようなクオリティの高いところもあるが、期間限定で出店するコラボカフェは、大抵の人が味や質を期待していないのではないだろうか。「まぁこんなもんだよね」と、妥協してカフェに通ってはいないだろうか。

 

そこに一石を投じたのが、天ヶ瀬冬馬くんである。

 

彼は「天ヶ瀬冬馬」として、一切の妥協を許さない。仕事もプライベートも関係ない。彼が「天ヶ瀬冬馬」である限り、冬馬くんは何事にも決して手を抜いたりはしない。冬馬くんのその生き方は、「カレーパン」でも変わらなかった。あのカレーパンは、きっと冬馬くんが日夜研究し続けて作ったカレーパンである。ただでさえ、普段からカレーを作る際はスパイスからこだわっている冬馬くんだ。「天ヶ瀬冬馬」の名を冠するならば、それを求めて買ってくれるファンに、妥協したものなど食べさせられない。そうして出来たのが、「冬馬の理由(ワケ)あって、バターチキンカレーパン!」なのだ。

 

冬馬くんのカレーパンは冬馬くんの志の高さそのものであり、それは多くのオタクの常識を覆した。それはまさに、SideMの作中で多くの人の人生に影響を与えてきた「天ヶ瀬冬馬」と同じ図ではないだろうか。冬馬くん自身は「コラボカフェに裏切られてきたオタク云々」など難しいことは考えていないだろう。彼はただ、自分の信じる「最高」を突き詰めただけなのだから。そうだ、冬馬くんはいつだって自分の決めた道をひたすら突き進んでいるだけで、その背中が人々の心を打つのだ。冬馬くんは良い意味で他人のことを見ていないし、当然比べたりもしない。だからこそ、「天ヶ瀬冬馬」は嘘を吐かない純粋な「光」となり得るのである。冬馬くんのカレーパンは、そんな「光」を具現化したものなのかもしれない。中に詰まっているのは、「トップアイドル」を目指す冬馬くんの生き様なのだ。「天ヶ瀬冬馬」は「天ヶ瀬冬馬」として生きているだけで、他人の人生を変えてしまう。そんな冬馬くんの罪な魅力こそが、あのカレーパンの美味しさの秘密なのかもしれない。

 

私は私の怠慢のせいで大阪に出張してくるカレーパンを食べられないが、多くの人が冬馬くんのカレーパンを愛してくれるのならば、冬馬P冥利に尽きるというものである。たくさんの人が冬馬くんのカレーパンを食べて、冬馬くんの目指す「トップアイドル」を感じてくれるのなら、私の中の美味すぎ謙信も満足してくれるに違いない。

 

 

 

 

 

 

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何度見てもしょうもない。