頭痛が痛い

怪文を綴る腐女子

東京ビッグサイトは阿部寛の夢を見るか

オタクの聖地、東京ビッグサイト。最近そこに南展示棟が新しく建設されたことはご存知だろうか。

先日新築ほやほやの南展示棟を訪れたので、その話を聞いてほしい。

 

令和元年、7月21日。私は朝の8時半から東京ビッグサイトにいた。腐女子が早朝からビッグサイトにいる理由など、説明するまでもないだろう。キャリーケースをゴロゴロと引きずりながら、私はあの妙な幅の階段をエッホエッホと登っていた。あの階段、一歩で登るには幅が広いし、二歩で登るには狭い。私の足が短いだけという可能性も拭えないが、そもそもなぜビッグサイトはあんな高台にあるのだろうか。なぜオタクがあのクソデカ階段を登らねばならんのだ。もう少しビッグサイト側から寄ってくれてもいいのではないか。

いやそんなことはどうでもいい。とにかく、私は神の本を手に入れ、ついでに自分の本を売るためにわざわざ東京ビッグサイトまでやってきたのであった。しかもなぜかこの日、高校時代からつるんでいるオタク仲間が他に2人もサークル参加していた。私含め3人とも大阪に住んでいるのに、3人ともわざわざ東京まで来て本を売るらしい。気が狂っている。

 

さて、今回私が配置されたのは、冒頭でお伝えした南展示棟であった。

「南4ホール」って、なんだ。どこなんだ。

方向音痴すぎて徒歩5分の道に30分かける私が、はたして南展示棟にたどり着けるのだろうか。私は、

←↑

一サ

般|

 ク

 ル

の看板の前で唸っていた。しかしここで首を捻っていても仕方がない。とりあえず案内に従って、南を目指しているっぽいオタクの跡をつけた。そしたら、全然知らん建物にたどり着いた。床も壁も光り輝くそこは、いかにも新築の南展示棟であった。入ってすぐ動く歩道が連なっており、「京葉線で見た」と思った。このクソ長通路は必要なのだろうか。これからサークルなり一般なりで南に行く予定がある人は、本当に覚悟していただきたい。本当にめちゃくちゃ歩く。しかも、ここから西には繋がっていないので、別の棟に移動する際はまたこのクソ長通路を歩かされるのだ。なぜ南だけこんなに隔離されなければならないのか。オリンピックが南でやれ。

そんなこんなでヒィコラ言いながらようやく南4ホールにたどり着き、サークル入場待ちの列に並ぶことが出来た。

サークルチケットを封筒から取り出すと、端が千切れていたので1人で笑ってしまった。おそらく封筒を開ける時に一緒に千切ってしまったのだろう。手で開封するからそうなるのだ。

サクチケが千切れていても入場は出来る。9時の開場と同時に中に入った私は、一瞬で設営を終えて暇を持て余していた。

暇とは言え、一応やらなければならないことはある。

ラソン(冬馬くん上位)と古戦場(桜庭薫有利)だ。

ここ数日、ずっとこの両者を反復横跳びしていた。SideMに行ってはゼリーをガブ飲みし、グラブルに行っては燃え盛る鰹を殴る。締切を守って入稿していて助かった。

というわけで一般入場までの時間にポチポチスマホを触っていたわけだが、どうも電波の調子が悪い。ロードが入るたびに1分くらいかかる。一瞬イベントを走りすぎて速度制限がかかったのかと思ったが、そういうわけではないようだった。それなのにどうも動きがモッサリしている。周囲の反応から察するに、どうやらこの会場にいる皆が同じような状況らしかった。オタクにとって電波が入らないというのは致命的だ。それなのに、ツイッターすら読み込みに時間がかかってしまう。不安に駆られた私は、阿部寛のホームページを表示させて心を落ち着かせていた。阿部寛のホームページはこの状況でも爆速で開いた。

abehiroshi.la.coocan.jp

私が阿部寛の出演作を眺めていると、とうとう一般入場が始まった。その途端、あれだけモタモタしていた読み込みが突然標準に戻った。阿部寛のホームページが効いたのだろうか。よくわからないが、とにかくイベントが走れれば私はそれでいい。私は鰹殴りを再開した。

そんなこんなで一般開場から1時間ほど経ったころ、突然通信が遮断された。もはや電波が悪いとかそんなレベルではなく、ブラウザもツイッターも何一つ読み込まなくなったのだ。「急にクソ電波になった」とツイートすることも出来ない。なんてこった。オタクにとって電波は死活問題だ。ツイッターもソシャゲも出来なければ、死ぬしかない。電波が入らないというのは、人権が無いにも等しいのである。なんとあの阿部寛のホームページすら開けない。もうお終いだ。ノストラダムスの大予言は今日この日のことを指していたのだ。藁にもすがる思いで阿部寛のホームページを何度もリロードする。しかし、阿部寛が私に微笑んでくれることはなかった。これほどまでに阿部寛のあの凛々しい微笑みを恋しく思った日があっただろうか。

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あゝ、阿部寛……。

人権を失ってから、40分ほどが経過した。もう限界だ。耐え切れずホールの外のお手洗いへ飛び出す私。

ようやく私は人権を取り戻した。阿部寛のホームページはもちろん、ツイッターも見られる。

またあの監獄へ戻ることを考えると、寒気がした。

戻りたくねえよぉ〜〜〜!!!私のスペースをここに移動してくれ〜〜〜!!!

ホール外の自販機前に、腐女子の嘆きが(脳内で)こだまする。

しかしどう考えても戻らなくていい理由が見つからないので、私は泣く泣く自ら人権を捨てた。さようなら、阿部寛……。

トボトボとスペースに戻り、電波状況を確認する。すると今度は、ツイッターは重いとはいえなんとか読み込むのに、ブラウザがうんともすんとも言わなくなってしまった。慌てて阿部寛に会いに行こうとすると、なんと彼のホームページを開いていたタブを消してしまっているではないか。グーグルすら開かないこの状況で、阿部寛を見られる道が潰えてしまった。

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おお、阿部寛よ……。

とりあえずツイッターは生きているだけ、先程よりもマシと言うべきか。イベントを走れなくなったのはつらいが、阿部寛を失った今どうすることも出来ない。

途方に暮れてスケブに落書きしていると、前述したサークル参加しているリアル友人がスペースに来てくれた。参加するとは聞いていたが朝から音沙汰がなかったので、この目でその実在を確認して爆笑してしまった。ほんとにいるのかよ。友人のスペースは西に配置されていたため、わざわざ南まで悪いねと労うと、「いや、○○(某CP)の本買いに来たから」と向こうの島へと消えていったので、最高かよと思った。なんならこの日で一番面白かった。

 

そろそろ人も少なくなってきたし、早めに撤収することにした。何より早くこのクソ電波状況から解放されたい。阿部寛のホームページ並の爆速で片付けて、スタコラサッサと南展示棟を去った。

 

 

そんなこんなで即売会は無事終了した。

私が皆に聞いてほしいのは、「南展示棟は電波が入らない」この一点である。補足しておくと、問題なく繋がったと言う人もいれば時間中一度も繋がらなかったと言う人もいるようなので、必ずしもこう!というわけではないが、それでも多くの人が「電波状況が悪い」と感じたことは確かである。

 電波が悪くてネットワークに繋げない。即売会中にそんな状況に陥ったとき、一番致命的なのは何かおわかりだろうか。ツイッターが出来ない。ソシャゲが出来ない。確かにそれも一大事だが、もっと大変なことがある。

サークルリストをピクシブのブックマークやツイッターのお気に入りで済ませているそこの君!!!そう君だ!!!君に語り掛けている!!!

あの日私は、サークルリストが見られないと嘆く人々をたくさん見てきた。いつでもどこでもネットワークに繋げるこの時代に、皆油断してしまっているのだ。幸い私はあまり島と島を移動しないタイプなのでカニ歩きするだけで買い物は済んだのだが、もう南展示棟ではオンラインに頼れないと思った方がいい。最低でもオフラインで見られるメモアプリ等でリストを作っておけ。

いやもっと言うなら、いつなんどきスマホがどうなるかなんてわからないのだから、たとえ西でも東でも、サークルリストはアナログで作っておくに限る。コミケには各キャリアのアンテナ車が出張してくれるため、先日よりはマシな状況だと推測しているが、それでもスマホあぼーん(死語)したらどうしようもないのである。君にも、人を殺してでも欲しい本があるだろう。人を殺めてしまう前に、古き良きバインダーにサークル配置図を挟んで蛍光ペンで印をつけておくのだ。私はビッグサイトに来るたびにオタクが皆元気で嬉しくなるので、そのオタクたちに後悔してほしくない。フレーフレー、オタク。大阪から腐女子が応援しているぞ。

 

 

ちなみに、その腐女子は10月にまたビッグサイトに行くことが確定しているが、次は南に配置されないことを祈るばかりである。

即売会を終えた帰り、気の狂った友人たちと新幹線で大阪へ帰った。生まれて初めてシンカンセンスゴクカタイアイスを食べた。ほぼスケートリンクだった。

家に着いて、阿部寛のホームページを開いた。阿部寛は、変わらぬ凛々しさで私を見つめてくれていた。