頭痛が痛い

怪文を綴る腐女子

アイドルとして、ゾンビは生きる。

 

「アイドルアニメ」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか。

アイドルマスター」「ラブライブ!」「アイカツ!」などなど……「アイドル」という題材は人気があり、山手線ゲームが出来そうなくらい巷に溢れている。時はアイドル戦国時代。ただ単に「可愛い」だけのアイドルでは太刀打ち出来ないのが現状である。

そんなアイドル業界に、とんでもない武器を引っさげてやってきたアニメがある。

ゾンビランドサガ」だ。

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zombielandsaga.com

 

このゾンビランドサガ、簡単に紹介すると、ゾンビ佐賀アイドルをするのである。

いくらアイドル戦国時代とはいえ、「ゾンビ」に「佐賀」。欲張りすぎではないだろうか?応仁の乱に戦闘機B-29と覇王色の覇気を持ち込んだくらいの無茶苦茶っぷりである。世界観を考えてくれ。

 

 

で、先日、そんな「ゾンビランドサガ」を全話鑑賞し終えた。

結論から言えば、非常に面白かった。単純な爆発力は弱いかもしれないが、噛めば噛むほどイカゲソのように味が出てくる良作である。

 

先に述べたように、この作品は「ゾンビ」「佐賀」「アイドル」をするというストーリーである。グループのメンバーは全員ゾンビであり、当然一筋縄ではいかない。しかも第一話の時点では、主人公のさくら以外のメンバーはまだ覚醒しておらず、意思の疎通もままならない、呻きながら歩き回るだけの絵に描いたそのままのゾンビなのである。どう考えてもアイドルどころではないのだが、彼女らのプロデューサーである謎の男、巽幸太郎は、ろくにレッスンもしていないゾンビたちを、なんとデスメタルのライブ会場に送り込む。そこでさくら含めゾンビたちは、いろいろあってアイドルらしからぬ見事なシャウト、ヘドバン、ダイブを決め、ライブは大盛況に終わる。それが、「ゾンビランドサガ」第一話である。

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そして続く第二話。ここでようやく、ほぼ全てのメンバーが覚醒する。「伝説の特攻隊長・二階堂サキ」「伝説の平成のアイドル・水野愛」「伝説の昭和のアイドル・紺野純子」「伝説の花魁・ゆうぎり」「伝説の天才子役・星川リリィ」「伝説の山田たえ」そして、特に伝説でもなんでもない「源さくら」。彼女ら7人が、アイドルグループ「フランシュシュ」として、佐賀を救うべく立ち上がる(ちなみにグループ名が決まるのは三話である)。

しかし山田たえを除く全員が覚醒したからといって、アイドルが上手くいくわけではない。なぜなら全員、アイドルになりたくてなったわけではないからである。自分の意思とは関係なしに蘇らせられたうえに「アイドルをやろう」なんて言われて、やる気になる方がおかしいのだ。当然、巽がデスメタルの次に用意したステージも、全員の気持ちはまとまらないまま登壇することになる。しかもこの会場、入っている客が老人ばかりで、とてもじゃないがアイドルには相応しくない。そんなコンディションの中、さくらが披露したのは一人で練習したアイドルソングではなく、なぜかブチギレラップなのだった。

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もう滅茶苦茶だ。全然アイドルアニメではない。

 

 

そう、この「ゾンビランドサガ」、アイドルアニメではないのだ。

先程この作品について「アイドル業界に『ゾンビ』という武器を引っさげてやって来た」と述べたが、訂正する。

正しくは、「ゾンビ業界に『アイドル』として殴り込んできた」。それが「ゾンビランドサガ」である。

つまり、あくまで主体は「ゾンビ」なのだ。

 

私はゾンビランドサガを分類するならば、「シュールギャグ」だと思っている。ゾンビが、ゾンビなのに大真面目にアイドルをやっている。もう死んでいるのに、首も腕もすぐポロポロ取れるのに、それでも彼女たちは真剣に、本気で、アイドルをする。そこがゾンビランドサガの魅力なのだ。

全十二話の大まかなあらすじとしては、初めはバラバラだったメンバーがステージを重ねるにつれ徐々に絆を深め合い、時に対立しながらも運命共同体として進んでいく……。特にこれといった面白みもなく、毒にも薬にもならない、平凡なストーリーだ。

だが、そのストーリーをなぞるのはゾンビである。肌は薄暗い緑色で全身傷だらけの、まごうことなきゾンビだ。要は、ゾンビが人間の真似事をしていると言ってもいい。ゾンビが歌や踊りを覚え、どうすればお客さんに喜んでもらえるか悩み、人前でパフォーマンスする。ゾンビなのに、もう死んでいるのに。腕はすぐすっぽ抜けるし目玉も外れるのに、彼女らは人間のアイドルと同じように、誰かを笑顔にするためにステージで歌う。そのくせ、睡眠を必要としないから徹夜でレッスンするなど、変なところでゾンビらしさを見せてくる。

しかし、やはりと言うかなんと言うか、彼女らは頑張ってはいるのだが、ゾンビかつ素人の集まりなので全然うまくいかない。経験者である愛と純子がなんとか引っ張っているような状況である。だが失敗続きではあるものの、フランシュシュみんなが懸命に頑張っていることは伝わるので、それが微笑ましく、ちょっとコミカルで笑いを誘うのだ。

 

しかし続く第六話で、経験者としてみんなをリードしていた愛と純子が対立してしまう。「平成のアイドル」である愛と、「昭和のアイドル」である純子。平成と昭和でアイドルのあり方が大きく変化したことはよく議論されているが、ゾンビランドサガではそれを当事者同士でさせたのだ。普通の人間同士ならどうしても「古い価値観」VS「新しい価値観」になるところを、昭和と平成それぞれの時代を生き抜いて現代に蘇ったゾンビは、それを「正しい価値観」VS「正しい価値観」にしてしまう。愛と純子、どちらも正しく、故に譲れない。初めての大きなステージを目前にして、二人の気持ちはすれ違ってしまう。

この辺りから、「ゾンビが真剣にアイドルをやっている」ことを笑えなくなっていることに気づく。そして、なぜ彼女らが本気でアイドルに取り組んでいるのか、だんだんと見え始める。

第六話、かつて自分が所属していたアイドルグループをネットで調べた愛は、そこで自身の死が美談として扱われていることを知る。「水野愛の死を乗り越えて――」そんな見出しが並ぶネット記事を見て、彼女は呟く。

 

「まだ何も終わってない。私はここにいる。過去なんかじゃない……!」

 

そしてこのアニメのキャッチコピーは、「私たち、生きたい!」――

 

彼女たちフランシュシュは、生にしがみつくゾンビそのものであり、その手段としてアイドルを選んだ。

そう、ゾンビランドサガは、「ゾンビがアイドルとして生きようとする」物語なのだ。

彼女たちは生きるために必死でアイドルをやる。泥まみれになっても、首が取れても、目の前のお客さんに笑顔を届けようと精一杯頑張る。その姿はどこか歪でズレているのだが、それでも彼女たちの本気は伝わってくる。ゾンビが(もう死んでいるが)必死でアイドルを頑張るというコミカルさはそのままに、がむしゃらに生きようとする彼女らの姿は熱さとなって胸を打つ。「シュール」というよりは、バクマン。で提唱されていた「シリアスな笑い」が近いのかもしれない。普通アイドルが立つ野外ステージに落雷が直撃したら、ライブは即中止して客を避難させるべきなのだが、フランシュシュは違う。ゾンビだから雷に打たれても死なないし、それどころか帯電して自前でケロケロボイスやレーザーが出せるようになる。それを利用して、彼女らは落雷で滅茶苦茶になったステージの上で進化したパフォーマンスを見せる。「そうはならんやろ」という面白さを「そうきたか」という熱さが包み込み、フランシュシュはアイドルとして会場を、ゾンビとして視聴者を熱狂させたのだ。

「私たちはここにいる。私たちは生きている」――そんな彼女たちの必死の叫びは、そのままパフォーマンスとなって昇華される。すでに死んでしまったゾンビなのに、いや、死んでしまったゾンビだからこそ、そのメッセージは何よりも純粋な本音だ。だから、彼女たちは本気でアイドルをやる。生きるために、自らの存在を主張するために。

ゾンビランドサガは、「ゾンビ」で「アイドル」で「佐賀」な、かなり欲張りなアニメだ。しかし生に貪欲なゾンビはそのどれをも手放すことなく、それどころか「もっと」とまだ欲張っているようにすら見える。

幸い、ゾンビランドサガは二期が決定している。二期放送前にこの作品を知って全話見られたことは、私にとってラッキーなことであった。もしゾンビランドサガが気になるという方がこの記事を読んでいるなら、ぜひ二期放送前に見てもらいたい。ゾンビの魂の叫びを、ゾンビが腹の底から叫ぶ「おはようございます」を、聞いてくれないか。

グッドモーニング SAGA――フランシュシュが佐賀の救いとなることを、一ファンとして切に願う。

 

 

 

ちなみに余談だが、私の推しは5号ことゆうぎりである。

とりあえず、何も聞かずにこれを見てほしい。

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最高では??????

ゆうぎりちゃん、まずお顔がたいへんに良い。女オタクは推しの説明をする時必ず開口一番「顔が良い」と言ってしまう。そんなもん見ればわかるのだが、言わずにはいられない。ゆうぎり、顔が良い。あとおっぱいがでっかい。つり目気味なのも可愛いし、フランシュシュで唯一下まつげが描かれているところも良い。髪をハート型に結っているところも最高に可愛い。彼女が生きていた明治時代にハートという概念があったのかは知らないが(不勉強で申し訳ない)、ゾンビになっても毎朝髪を結っているところを想像するとめっちゃ可愛い〜〜〜てなる。あとおっぱいがでっかい。それに服装も、花魁なのに何故か袴ブーツという女学生スタイルなのもたまらない。オタクはそういうのが好きだと知ってての犯行だろうか?いいぞ、ちょうだい ちょうだい そういうのちょうだい。あとフランシュシュはみんなゾンビ姿の時は特徴的な傷があるのだが(さくらの顔面を横切るような大きな傷や、愛の全身包帯等々)、ゆうぎりは首をぐるっと一周するように傷跡がある。これはもう、死因が「斬首」もしくは「絞首」に違いない。個人的には斬首だと嬉しい。今まで人が死ぬジャンルを通ってこなかった私が、まさか推しの死因で興奮する日が来るとは思わなかった。そんな風に首の傷ひとつで想像力を掻き立てられるのも、ゆうぎりちゃんの魅力。あとでっかいがおっぱい。

もちろんゆうぎりちゃんの可愛さは顔だけではない。

彼女はメンバー内で一人だけ、第二次世界大戦前に死んでいる。そんな人間が現代に蘇って、時代に適応できるだろうか?しかしそんな心配を余所に、ゆうぎりはめちゃくちゃ肝が座っている。というよりは、彼女も本編で言っていた通り、「あるがままを受け入れるようにしている」のだろう。何もかもわからないが、彼女は現代の歌と踊りを完璧にマスターし、生きていた頃に身につけたであろう三味線などの芸事も活かしつつ、チェキ会も普通にこなしてしまう。

アイドルとして生きることも、「芸事にこの身を捧げる覚悟はとうの昔に出来ている」とかなり前向きに捉えている。不安なこともたくさんあるだろうに、それを全く感じさせない強さ。とても良い。すごく大人びて見えるが、実は純子と同じ19歳の「少女」といって差し支えない年頃であるのも良い。現代では可愛いお洋服をいっぱい着て、美味しいスイーツをいっぱい食べて、思う存分「女の子」を堪能してほしい……。別に彼女は花魁であったことを憂いているわけではないので完全に余計なお世話なのだが、それでもオタクは推しが健やかに幸せであることを願わずにはいられない。

彼女が「ゆうぎり」ではなく「フランシュシュの一員」として描かれる時、彼女は他のメンバーと同じように跳ねて喜んだり、冷や汗を流したり、ゾンビを隠すためのメイクが取れて「ヤベ…」という顔をしたりする。私はそれを見るととても嬉しくなってしまう。「ゆうぎりちゃんが現代で生きてる〜〜〜〜!!!!!(もう死んでるけど)」とよくわからない感情で胸がいっぱいになるのだ。

と、あれこれ語っておいてなんだが、なんと彼女、一期ではメイン回がない。死んだ理由もわからないし、彼女がセンターの楽曲もない。それでも可愛いもんは可愛いんじゃい!!!メイン回が無かったら推したらいかんのかい!!!と、5号推しの端くれとして毎日「ラブ」を噛み締めていた。

そこに、「佐賀事変」という爆弾である。

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何度でもリンクを貼るが、何度でも見てほしい。

これもう「正解」では???ゆうぎりちゃんをセンターとして作った曲として、「正解」では???

そもそも私がビッグバンド好きなのでこの曲を好きでないわけがないのだが、この一曲、このMVでゆうぎりちゃんの魅力がこれでもかと発揮されている。歌唱力はもはや言うまでもなく、何気ない動作ですら垣間見える色気だとか、長身+ヒールでセンターに相応しい迫力だとか、ちょっとブラックな歌詞もいかにも彼女らしくて最高だ。あまりに良すぎて与謝野晶子になってしまう。向こうの世界では佐賀事変のCDを出したのだろうか。お渡し会とかやったんだろうか。あ〜〜〜参加したい〜〜〜。ゆうぎりちゃんとお話ししたい〜〜〜。向こうの世界のファンになって花魁キャラのブレなさに感心したい〜〜〜。ゆうぎりちゃんのことなんて何も知らないクソ野郎がツイッターで「花魁キャラとか作り過ぎでキモいわwww」とか中傷しているのを見つけてブロックしたい〜〜〜。そして自分のアカウントで「5号の花魁キャラは最早キャラではなく、5号は花魁そのものなのだ」みたいなクソめんどくさいツイートをしたい〜〜〜。だんだん売れ始めてエッチなグラビアとかのお仕事してる5号を見て複雑な気持ちになりたい〜〜〜。5号ちゃん最高~~~世界一可愛いよ~~~。

 

余談が長くなりすぎた。推しについてすぐクソデカ早口で語ってしまう。

 

 

 

一応言い訳しておくのだが、ここで述べたことは全て私一人の見解であり、正解ではない。「ゾンビランドサガ」は一見ネタアニメのようでかなり細かいところまで作り込まれているので、見直すとまた新たな発見があると思う。最近、フランシュシュ面々がゾンビ姿で動いているときは常に「グチャグチャ」と音が鳴っていることに気づいた。ゾンビだもんな……。

二期ではいったいどんな「フランシュシュ」を見せてくれるのか。

今からとても楽しみである。

 

 

 

あとゆうぎりちゃん回と水着回が欲しい。ほんとに。頼む。